連日大盛況の大衆酒場中村屋は一体なぜここまで人気なのか?その核心にあるのは、徹底した素材へのこだわりと、時代に逆行するかのような価格設定の妙です。飲食業界の平均原価率が30%前後で推移するなか、中村屋の看板料理における推定原価率は45%〜50%超に達しているとみられます。この数値を可能にしているのが、毎朝食肉市場から直接仕入れる強固なルートと、席稼働率の圧倒的な高さです。
店内に入ってまず目を奪われるのが、カウンター中央に据えられた特大の煮込み鍋です。もうもうと湯気を上げるその鍋の中では、牛すじ、ハチノス、シロが独自のブレンド味噌と根菜類とともに何時間もじっくりと炊き上げられています。表面に浮かぶ上質な脂の輝きと、口に含んだ瞬間に溶けていくような柔らかさは、下処理に途方もない手間暇がかけられている動かぬ証拠です。
さらに、焼き台を担当する職人の無駄のない手さばきも見逃せません。備長炭の強火で一気に表面をカリッと焼き固め、肉汁をぎゅっと内部に閉じ込めたもつ焼きは、1本ごとのポーションが通常の居酒屋の1.3倍近いボリュームを誇ります。この「安くて大衆的だが、仕込みと技術は一級の割烹にも引けを取らない」というギャップこそが、舌の肥えた呑兵衛たちを唸らせてやまない最大の要因です。