ファッション通販のスペック表に必ず記載されている「わたり幅(ワタリ幅)」とは、パンツの股の付け根(内股の縫い目が十字に交差するポイント)から、外側の端までを生地に対して直角・水平に測った直線距離を指します。漢字では「渡り幅」とも書き、文字通り「太ももの端から端まで渡した長さ」を表す業界用語です。
ここで初心者が最も陥りやすい誤解が、「わたり幅=太もも一周の長さ」という思い込みです。パンツは前身頃(フロント)と後身頃(バック)の2枚の立体的な布を縫い合わせて作られており、平置きした状態の片面を測った数値がわたり幅となります。つまり、「わたり幅 × 2」を計算することで、そのパンツの太もも付け根周囲(ぐるり一周のおおよその寸法)が算出できます。
なぜウエストのサイズがぴったり合っているにもかかわらず、太ももが入らない悲劇が起きるのでしょうか。その背景には、人体の骨格構造と衣服の立体裁断におけるギャップが存在します。
ウエストは主に脂肪と内臓の位置関係によって変動しやすい柔らかい部位ですが、太ももの付け根は大腿骨と大腿四頭筋・内転筋群という強固な骨と筋肉で構成されています。特に日常的に運動や筋トレをしている人、あるいは骨格ウェーブ体型のように骨盤の下側から太もも外側にかけてボリュームが出やすい人は、ウエストと太ももの比率が標準規格のパターンから大きく乖離します。アパレルの既製服は「特定のウエスト数値に対して、平均的な太ももの太さはこれくらい」というJIS規格やブランド独自の基準値で作られているため、太ももの発達した人がウエスト基準だけで選ぶと、わたり幅のゆとりが完全に枯渇してしまうのです。