鈴木保奈美が劇中で見せたスタイリングは、1990年代初頭の女性ファッションを一変させました。オーバーサイズのトレンチコートに大判のチェックマフラーを巻き、足元はローファーやフラットシューズ。肩肘を張らないトラッドカジュアルでありながら、どこか洗練された知的さを漂わせる装いは、多くの働く女性たちのバイブルとなったのです。
また、ネット上で今なお議論が絶えないのが「最終回の結末」をめぐる解釈です。約束の電車より一本早い4時33分の列車に乗り、完治の前から忽然と姿を消したリカ。駅のフェンスに残された「バイバイ、カンチ」と書かれた白いハンカチは、多くの視聴者の涙を誘いました。一部では「カンチに裏切られた悲劇のヒロイン」と受け止められがちですが、作品の本質はまったく異なります。
3年後の東京で偶然再会した際、完治は高校の同級生だった関口さとみ(有森也実)と結婚していました。しかしリカは、過去にすがることも恨み言を口にすることもなく、自らの足で歩んでいる充実感を笑顔に滲ませて雑踏へと消えていきます。「誰かの所有物になるのではなく、自分の人生を自分で選ぶ」というリカの意志こそが、あの結末の真意であり、柴門ふみの原作から脚本の坂元裕二が昇華させた最大のエレガンスでした。