現役時代の豪栄道を巡っては、インターネット上や一部のファンの間でいくつかの偏った見方や誤解が存在していました。親方となった今だからこそ解き明かされる、それらの虚実を検証します。
誤解1:「首投げばかりで押し相撲の技術が劣っていた」という俗説
土俵際での起死回生の首投げは確かに豪栄道の代名詞であり、数々の劇的な逆転劇を生み出しました。しかしネット上では「首投げ頼みで立ち合いが甘い」と揶揄される場面も散見されました。実際の取り組みデータを精査すると、首投げが決まった一番は通算でもごく一部に過ぎません。本質的な強さは、立ち合いの猛烈な踏み込みスピードと、相手の脇を固めて起こす強烈な「おっつけ」にありました。首投げは体が伸びきった最後の窮鼠猫を噛む手段であり、基本は正統派の押しと右差し・寄り切りが屋台骨でした。現在の武隈親方が弟子に「安易な投げに頼るな、まずハズで押せ」と徹底指導している事実が、何よりの証左です。
誤解2:「師匠・境川親方との確執によって独立した」という憶測
相撲部屋の独立に際しては、しばしば師弟間の不仲や対立がネット上で噂されます。豪栄道が境川部屋から独立した際も一部の掲示板で穿った見方が囁かれました。しかしこれは完全な事実無根です。元小結・両国である境川親方は「弟子が一人前になったら自分の城を持たせるのが親の務め」という確固たる信念を持つ人物。独立に際しても豪ノ山の転籍を快く認め、物心両面で武隈部屋の立ち上げを後押ししました。武隈親方も事あるごとに「今の自分があるのは境川の親父のおかげ」と語っており、古巣への深い敬意と恩義は揺らいでいません。