脳へ向かう動脈は、首の前側を通る左右の内頸動脈(脳血流の約8割を供給)と、首の後ろの頸椎横突孔を通る左右の椎骨動脈(合流して脳底動脈となり約2割を供給)という2つの主要ルートに分かれています。この全く異なる2系統の血流が脳底部の視交叉や下垂体の周囲で合流し、七角形(または六角形)の環状ネットワークを形成しているのがウィリス動脈輪です。
最大の役割は、動脈硬化や血栓によっていずれかの主要動脈が狭窄・閉塞した際に発揮される側副血行路(コラテラル)の形成です。片側の内頸動脈が急激に詰まった場合でも、ウィリス動脈輪が正常に機能していれば、反対側の内頸動脈から前交通動脈を経由して、あるいは後方の椎骨・脳底動脈系から後交通動脈を経由して瞬時に血液が逆流・迂回供給されます。この精緻なバックアップ機構のおかげで、主幹動脈が閉塞しても広範な脳梗塞を発症せず無症状で経過するケースが臨床現場では珍しくありません。