精神医学の知見によれば、神経性食欲不振症(拒食症)は精神疾患の中で最も致死率が高い病の一つとされる。長期間にわたる過度な栄養失調は、全身の臓器に壊滅的な影響を及ぼす。低血糖、電解質異常、低体温、そして深刻な心筋の萎縮。体重が正常値を大幅に下回ると、特別な自覚症状がないまま突然死を引き起こす心室細動などの心臓麻痺が頻発する。
さらに恐ろしいのは、脳への影響だ。深刻な飢餓状態に陥った脳は正常な認知機能を失い、鏡に映るガリガリに痩せ細った自分の姿を見ても「まだ太っている」と錯覚する歪みを生む。この「ボディイメージの障害」こそが拒食症の本質であり、周囲がどれほど説得しても自発的な食事摂取を拒み続けさせる原因となっている。