東日本大震災における遺体捜索と身元特定の15年は、日本の災害医療と法医学体制の脆弱性を浮き彫りにし、同時に大きな改革を促しました。今後必ず発生するとされる南海トラフ巨大地震や首都直下地震に向けて、私たちが学ぶべき教訓は明確です。
最大の問題は、日本における平常時の法医学・検視体制の人的不足です。震災当時、限られた数の法医学教授や警察医が過重労働の極限で活動しました。この教訓を受け、死因究明等推進基本法が成立するなど法整備は進みましたが、大規模災害時に数十万単位の検視・DNA鑑定を迅速に実行できる常設体制の構築は依然として道半ばです。
また、個人レベルでできる防災対策として、「事前の情報保存」の重要性が浮き彫りになりました。以下の判断基準は、大規模災害への備えとして知っておくべき現実的なアプローチです。
- 推奨される備え:定期的な歯科受診と治療記録の確認、マイナンバー等を通じた医療情報のバックアップ、家族間での手術歴・骨折歴・身体的特徴(あざ、タトゥーなど)の把握。これらは万が一の際に、最も確実な身元特定の鍵となります。
- 避けるべき行動:身元特定の手がかりとなる生前の私物(愛用の櫛や歯ブラシ、未洗浄の帽子など、個人のDNAが付着している可能性が高いもの)を、行方不明者の捜索中に섣불리(安易に)廃棄してしまうこと。これらは警察へ提供する貴重な照合資料となります。