縁切りの祈願所として、板橋の縁切榎と並び称されるのが四谷左門町に位置する陽運寺です。ここは「東海道四谷怪談」で知られるお岩様を祀る日蓮宗の寺院ですが、世間に流布する恐怖映画のイメージとは実像がまったく異なります。
史実におけるお岩さんは、夫を献身的に支えて貧しい田宮家を再興させた貞淑な女性であり、江戸時代から「夫婦円満」「商売繁盛」の守護神として篤く敬われてきました。そのため、陽運寺の縁切りと良縁祈願は、「悪縁を断滅させたうえで、真の良縁を手繰り寄せる」という前向きな循環を本質としています。境内にはお岩様ゆかりの井戸があり、邪気を洗い流す水盤や、境内の静謐な苔庭が参拝者の荒んだ精神を鎮めてくれます。
一方、赤坂の超一等地にある豊川稲荷東京別院の叶稲荷も、知る人ぞ知る因縁切りの聖地です。豊川稲荷の本尊は吒枳尼天(だきにてん)であり、数多くの芸能人や実業家が信仰を寄せる開運出世の霊場ですが、奥の院の奥まった一角に鎮座する「叶稲荷」は、すべての悪縁・因縁を断ち切り、開運の障壁を取り除く霊験で知られています。ここでは男女関係に限らず、金銭トラブルや病魔、商売の停滞といったあらゆる災禍を断ち切る祈願が日々捧げられています。