休み時間、教室のあちこちから聞こえてきた「アルプス一万尺 小槍の上で…」のフレーズ。だが、子どもたちの口から飛び出すのは正規の歌詞ではない。「小槍の上でアルペン踊りを踊り明かさ」ないのだ。代わりに「焼肉食ったら腹こわした」といったナンセンスな爆笑フレーズや、地域ごとのローカルルールを盛り込んだ破天荒な歌詞が響き渡っていた。
伝統的な童謡・手遊び歌の枠組みを根底から覆すこの現象は、日本全国の校庭で自発的に発生した口コミ文化の真骨頂と言える。誰が作詞したかもわからない不条理な歌詞が、口伝だけで全国へ伝播していった事実は興味深い。遊び心あふれる替え歌は、子どもたちにとって最初のパロディ音楽体験であり、言語感覚を磨く格好の遊具でもあったのだ。