実際に現地を取材すると、一般的な住宅街とは明らかに異なる異様なまでの秩序に気づかされます。日中の街路を歩いても人通りはまばらで、聞こえてくるのはカラスや野鳥の声、そして時折通過するハイヤーや高級外車のエンジン音のみです。
「渋谷駅から徒歩10分とは思えないほど、夜間は足音すら響く静寂に包まれます。自動通報システムや防犯カメラが張り巡らされており、警察官のパトロール頻度も都内最高レベル。治安に対する不安を感じたことは一度もありません」と語るのは、松濤に15年以上暮らす住民です。
SNSやネット掲示板では「コンビニがなくて不便」「坂道が多くて車がないと生活できない」といった指摘が散見されます。これは事実であり、街の風紀を守る厳しい用途制限のため、松濤の住宅エリア内にはコンビニや自動販売機すら原則として設置されていません。しかし、住人たちの移動手段は運転手付きの社用車や自家用車が基本であり、食材の調達もデリバリーや広尾・明治屋、代々木八幡方面の高級スーパーを利用するため、徒歩圏の商業施設不在はデメリットではなく、むしろ「不特定多数の侵入を阻むフィルター」として機能しています。