二人の女性を繋ぐ中心人物であり、名門代議士一族の跡取り息子・青木幸一郎を演じた高良健吾の怪演も見逃せない。彼は決して横暴な権力者として描かれない。物腰は柔らかく、育ちの良さが滲み出ている。しかしその内面は、家の名誉と役割を全うするために自らの欲望を完全に放棄した「空虚な器」だ。
自由を求めても逃げ場のない彼もまた、家父長制と特権階級の呪縛に囚われた被害者の一人といえる。美紀との気楽な関係に癒やしを求めながら、最終的には一族の要請に応じた結婚を選ぶ幸一郎。彼の見せる微かな諦念と寂しげな横顔は、格差の頂点に君臨する者が払う代償を静かに物語っている。