「カナヅチで25メートルも泳げないけれど、海のアクティビティに参加できるのか」という不安は、ツアーデスクに寄せられる最も典型的な相談事項です。結論から述べると、シュノーケリングも体験ダイビングも、一般的な「水泳の得意・不得意」は参加の可否に直結しません。
シュノーケリングにおいて泳力が必要ない理由は、着用するライフジャケットやウエットスーツが強力な浮力を生み出すためです。人間の体は脱力するだけで勝手に水面に浮かび上がる構造になっており、足をバタ足のようにゆっくり動かすだけで、フィン(足ひれ)の推進力によって驚くほどスムーズに進みます。水中に顔を浸けたままシュノーケルパイプ越しに口呼吸を維持するコツさえ掴めば、息継ぎの技術は一切不要です。
一方、スキューバダイビングでは浮力調整装置(BCD)に給排気することで、水中で重力から解放された「中性浮力」の状態を作り出します。水泳のように激しく手足を動かす必要はなく、むしろ無駄な動きを抑えてゆっくりと深い深呼吸を繰り返すことこそが求められます。
ただし、ダイビングを選択する際に初心者が直面する最大の身体的ハードルが「耳抜き(圧平衡)」です。水深が深くなるにつれて水圧が増加し、鼓膜が内側に押し込まれて激しい痛みを引き起こします。これを解消するために、鼻をつまんで口を閉じ、鼻から優しく息を送り込んで耳管を開通させる「バルサルバ法」を行います。
現地インストラクターが強調する耳抜きの極意は以下の3点です。
- 痛くなる前に抜く:水面から潜降を開始した直後、水深50cm〜1mの段階からこまめに耳抜きを行う。痛くなってからでは水圧で耳管が塞がり抜けなくなる。
- 力任せに息を吹き込まない:過度な力でいきむと内耳を傷める危険があるため、優しく数秒間圧をかける。
- 抜けにくい時は合図を送って浮上する:片耳だけ抜けない場合は、抜けない側の耳を水面に向けて首を伸ばすか、少し深度を上げてやり直す。
シュノーケリングでは水面に浮かんでいる限り耳抜きは不要ですが、スキンダイビングのように潜り込む場合はダイビングと同様に正確な耳抜き技術が要求されます。