この怪異の根底には、日本人が古来より抱いてきた異界への恐怖が潜んでいる。日本民俗学会の礎を築いた柳田國男は、境界線や隠れた場所に現れる怪異の存在に着目したが、トイレという密室空間はまさに日常と非自由が交錯するエアポケットだった。昭和レトロな雰囲気が漂う戦前・戦後の木造校舎において、薄暗い便所は子供たちにとって最も無防備になる「聖域であり魔境」だったのだ。
国際日本文化研究センター名誉教授であり、妖怪研究の第一人者である小松和彦の研究によれば、怪人赤マントは伝統的な怨霊や妖怪の構造を受け継ぎつつ、都市化に伴う不安を吸収して誕生した「現代妖怪」の象徴とされる。時代に合わせて姿形や殺害の手口を変幻自在に変える柔軟性こそが、この怪談が途絶えることなく現代まで生き残った最大の理由である。