仁王門をくぐり、茅葺きの屋根と紅葉の対比に見とれながら石段を上り詰めると、重要文化財に指定されている「多宝塔」が姿を現す。元和6年(1620年)に建立されたこの美しい塔は、並んだ檜皮葺の屋根と精緻な木造建築美で知られ、境内のシンボルとして高くそびえ立っている。
多宝塔の立つ高台からの展望はまさに圧巻の一言だ。目の前には赤、オレンジ、黄色、緑が複雑に混ざり合う紅葉のグラデーションが広がり、その向こうには嵯峨野の街並みと京都盆地を一望できる。晴れた日には遠く比叡山までを視界に収めることが可能だ。
境内全体が山裾の傾斜地に沿って作られているため、視界の角度が変わるごとに全く異なる絶景が現れる。下から仰ぎ見る紅葉の天井と、高台から見下ろす色の海。この立体的構造こそが、多くの人々を魅了してやまない理由である。