スポーツ用マウスピースを取り巻く情報の中には、医学的根拠に欠ける誤解がいくつか存在します。
第1の誤解は、「スポーツ用マウスガードも歯医者なら保険適用で作れる」という思い込みです。健康保険制度は「病気や怪我の治療」を対象としているため、予防や競技力向上を目的とするスポーツマウスピースは基本的に自由診療(全額自己負担)となります。顎関節症の治療器具であるスプリント(ナイトガード)とは目的も素材の厚みも全く異なるため、混同しないよう注意が必要です。
第2の誤解は、「一度作れば半永久的に使える」という盲点です。スポーツマウスピースの耐用年数(寿命)は、成人の場合でも約1年〜2年が目安です。強い噛み締めによって奥歯部分の厚みが摩耗したり、樹脂素材が経年劣化で硬化して衝撃吸収力が低下します。半年に1回は歯科医院で噛み合わせのバランスと素材の摩耗度をチェックすることが推奨されます。
また、日常のメンテナンスにおける失敗も後を絶ちません。樹脂は熱に弱いため、熱湯消毒をすると一瞬で変形して使い物にならなくなります。スポーツマウスピースの正しい洗浄・お手入れ方法は、使用後に水道水(水またはぬるま湯)で指を使って洗い、市販のマウスピース専用洗浄剤や義歯用洗浄剤を週に数回使用して細菌の繁殖を防ぐのが鉄則です。歯磨き粉をつけてゴシゴシ擦ると研磨剤で表面に微細な傷がつき、雑菌の温床になるため避けてください。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
どのような選択が最善であるかは、個人の競技レベルや年齢によって明確に分かれます。
【歯科医院のオーダーメイドをおすすめする人】
・コンタクトスポーツ(ラグビー、アメフト、格闘技、バスケットボール等)を定期的に行う選手
・公式戦に出場する中学生・高校生・社会人アスリート
・市販品で吐き気や呼吸のしづらさを感じた経験がある人
・過去に歯の破折・脱臼や顎関節の痛みを経験した人
・筋力やバランス感覚を限界まで引き出したい競技者
【慎重な検討・定期的な再作製が必要な人】
・乳歯から永久歯への生え変わり途上にある小学生(歯列が急激に変化するため高頻度の作り直しが必要)
・現在進行形で歯科矯正治療(ワイヤー矯正・マウスピース矯正)を受けている人(主治医の歯科医師と密に連携して専用設計を行う必要がある)
・たまにレクリエーション程度で体を動かすだけで、コストを最小限に抑えたい人(この場合は市販の上位モデルから試す選択肢もあり)