雑誌編集長として文豪たちに原稿を依頼し、作家としては日本文藝家協会の理事を務めるなど、嵐山光三郎は文壇の表舞台と裏側の双方を誰よりも熟知していた。夜の銀座や新宿の文壇バーで繰り広げられた大作家たちの痴態や失言、知られざる創作の苦悩。それらは彼の筆を通じて、極上のゴシップでありながら深い人間ドラマへと昇華された。
作家を遠くから崇めるのではなく、同じ地平に立つ表現者として、あるいは手強い取材対象として対峙する。文壇の掟や義理人情を肌で知っているからこそ書ける秘話の数々は、単なる暴露話に終わらない。そこには、文字に命を賭けた人間たちへの深い畏敬と愛情が常に横たわっている。