鋼鐵塚蛍と竈門炭治郎の関係性は、一見すると「命を狙う危険人物と、怯える被害者」というギャグ描写で覆われています。那田蜘蛛山で刀を折られた際には包丁を二刀流で振り回して日暮れまで追い回し、無限列車編で刃こぼれさせた際にも激怒。遊郭編で刀を失った炭治郎に対しては「貴様にやる刀は無い」という呪詛のような脅迫文を送りつけました。
しかし、その狂気的な怒りの裏側に潜む本質は、鋼鐵塚蛍の日輪刀に対する尋常ならざる責任感と愛情です。自分が打った刀が折れたということは、使い手の命を危機に晒したということであり、同時に「折れない刀を作れなかった自分の未熟さ」に対する苛立ちでもありました。この感情の歪んだ表出こそが、あの鬼気迫る追走劇だったと読み解くことができます。
炭治郎もまた、鋼鐵塚の理不尽な怒りに怯えながらも、彼が打つ刀の切れ味とそこに込められた魂を決して疑いませんでした。刀鍛冶の里編において、鋼鐵塚が命がけで研ぎ澄ませた漆黒の刃を受け取った炭治郎は、その重みと気迫を肌で感じ取り、最終決戦への覚悟を固めます。言葉で馴れ合うことはなくとも、鉄と血を通じて通じ合う魂の共鳴が、二人の間には確かに存在していました。