重力のある地球上で人間が立ち上がるとき、血液は自然と下半身へ引き寄せられます。通常は自律神経の働きによって下半身の血管がキュッと収縮し、心臓への血流を維持して血圧を保っています。しかし、この連動システムが崩れることで脳貧血が引き起こされます。主な原因は次の3つに集約されます。
1. 迷走神経反射(血管迷走神経性失神)
強い痛み、過度な精神的ストレス、採血時の緊張、長時間の直立、あるいは激しい下痢や排便時のいきみなどが引き金となり、副交感神経である「迷走神経」が異常に興奮する現象です。心拍数が急低下し、全身の末梢血管が拡張するため、血圧がガクンと落ちて脳血流が途絶えます。健康な若年層から高齢者まで誰にでも起こり得る生理的な防衛反応の誤作動です。
2. 起立性低血圧
横になった状態や座った状態から急に立ち上がった際、交感神経による血管収縮が追いつかず、一時的に収縮期血圧(上の血圧)が20mmHg以上低下する状態を指します。脱水状態、寝不足、アルコール摂取の翌朝、あるいは降圧薬の服用中などに発生リスクが跳ね上がります。
3. 起立性調節障害(思春期・自律神経機能の未発達)
小学校高学年から高校生にかけての成長期に好発する身体疾患です。急激な身体の成長に自律神経の調整機能が追いつかず、朝起きられない、立ち上がると激しいめまいがする、午前中に倦怠感が著しいといった症状が慢性化します。単なる「本人の怠惰」や「根性不足」と誤解されやすいものの、明確な自律神経系の機能不全です。