人工呼吸器Peepの基準値と作用機序|過剰投与で血圧低下が起きる理由

人工呼吸器Peepの基準値と作用機序|過剰投与で血圧低下が起きる理由

人工呼吸器Peepの基準値と作用機序|過剰投与で血圧低下が起きる理由にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。

PEEP(Positive End-Expiratory Pressure:呼気終末陽圧)とは、人工呼吸器による呼気の終了時に、気道内圧が大気圧(0 cmH2O)まで下がりきらないよう意図的に一定の圧力を残留させる設定技術です。健常人が声門を閉じることで維持している「生理的PEEP(約3〜5 cmH2O)」を、気管挿管や気管切開によって声門機能がバイパスされた患者に対して人工的に再現・強化する役割を持ちます。

人工呼吸器管理においてPEEPが付加される主目的は、低下した酸素化能の回復と肺胞構造の維持です。重症肺炎や急性呼吸促迫症候群(ARDS)では、肺サーファクタントの機能不全や炎症性滲出液の貯留によって肺胞が非常に虚脱しやすい状態に陥ります。呼気時に肺胞が完全に潰れてしまうと、次の吸気で再び押し広げるために過大な圧力が必要となり、これが肺組織を傷つける原因になります。

PEEPの主な作用機序は以下の3点に集約されます。

  • 機能的残気量(FRC)の増加:呼気終末でも肺胞が開存し続けるため、ガス交換に関与できる肺容積が拡大します。
  • 無気肺の改善(肺胞リクルートメント):虚脱していた肺胞を再拡張させ、換気血流比不均等(V/Qミスマッチ)および肺内シャントを劇的に是正します。
  • ずり応力(Atelectrauma)の防止:呼吸サイクルごとの肺胞の「虚脱と再拡張」の繰り返しを抑制し、人工呼吸器関連肺損傷(VILI)を防止します。

なお、自発呼吸下で吸気・呼気ともに持続的な陽圧をかける様式をCPAP(持続陽圧呼吸)と呼び、侵襲的換気における強制換気モード(VCVやPCVなど)に基底圧として組み合わされるものを狭義のPEEPと呼んで区別しますが、肺胞を押し広げて虚脱を防ぐ物理的な原理そのものは同一です。

森 瞳
著者

森 瞳

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