磁石につかない金属の代表格であるアルミニウムと銅。身近な1円玉(純アルミニウム100%)や10円玉(銅95%の青銅合金)に強力なマグネットを押し当てても、手応えは皆無です。物理学において「非磁性」と一括りにされがちなこれらの金属ですが、磁気測定装置で微小な挙動を計測すると、両者の磁気的振る舞いは全くの別物であることが分かります。
銅の反磁性:磁石をわずかに押し返す斥力
純銅は「反磁性体」に分類されます。反磁性体とは、外部から磁界を近づけられた際、その磁界を打ち消すように反対向きの磁化を生じる物質です。極めて微弱ではありますが、科学的には「磁石に引き寄せられるのではなく、わずかに反発している」のが真実です。超精密な秤に吊るした銅ブロックに強力なネオジム磁石を近づけると、磁石のN極・S極のいずれを近づけても、数値上はわずかに浮き上がる(斥力を受ける)方向へ押し戻されます。
アルミニウムの常磁性:極めて弱く引き寄せられる力
一方、アルミニウムは「常磁性体」に属します。常磁性体は不対電子を持っているものの、熱運動のエネルギーによって各原子のスピンがバラバラな方向を向いています。外部から磁石を近づけると、その瞬間だけスピンが磁界の向きに整列し、計算上は磁石に引き寄せられます。しかしその磁化率は鉄の数十万分の一以下という極小レベルに留まるため、人間の指先の触覚では「全く反応していない」としか知覚できないのです。
ネオジム磁石を近づけて動かした時に起きる「電磁誘導」の魔法
アルミニウムや銅は、静止させた磁石にはビクとも吸い付きません。しかし、表面磁束密度が400ミリテスラ(4000ガウス)を超える超強力なネオジム磁石を用い、動的なアプローチを試みると劇的な反応を見せます。
厚さ数ミリの純アルミ板や銅板の斜面を用意し、そこにネオジム磁石を滑らせると、磁石はまるで粘り気のあるハチミツの上を滑るかのように、スローモーションでゆっくりと滑落します。垂直に立てた太い銅パイプの中にネオジム磁石を落下させると、自由落下の速度を遥かに下回り、フワフワと時間をかけて落ちていきます。
これは高校物理で習う「レンツの法則」とファラデーの「電磁誘導の法則」が引き起こす物理現象です。導電率が極めて高い銅やアルミニウムの近傍で磁界が高速移動すると、金属内部に渦状の電気(渦電流)が発生します。この渦電流が磁石の侵入を邪魔する向きの反発磁界を生み出し、非接触の強力なブレーキ力(磁気ブレーキ)として働くのです。吸い付くことは決してありませんが、金属と磁石が目に見えない力場を通じて強烈に干渉し合っている動かぬ証拠と言えます。