現場のリアルな実態を検証すると、軽度自閉スペクトラム症児が小学校入学後に直面するトラブルには特有のパターンが存在します。保護者の手記や当事者コミュニティの検証からは、入学直後の「小1プロブレム」だけでなく、目に見えにくい心理的ダメージの深刻さが浮かび上がります。
都内の公立小学校に普通学級として入学させたある母親の手記には、当時の葛藤と後悔が生々しく綴られています。
「保育園では加配の先生がうまく立ち回ってくれていたため、知的な遅れもない息子は『普通級で挑戦させたい』と親のエゴで決めてしまいました。しかし入学後、休み時間の自由な遊びの輪に入れず、ルールが分からないことから友達と口論になり、手を上げてしまうトラブルが頻発しました。息子は毎朝『学校に行きたくない、自分が嫌いになる』と泣き叫ぶようになり、秋には登校しぶりから完全な不登校に陥りました。後から考えれば、もっと早い段階で少人数の支援級を選び、安心して過ごせる居場所を作ってあげるべきでした」(元通常学級在籍児童の保護者の手記より)
また、近年教育現場で重大視されているのが「過剰適応」による二次障害です。特に言葉が達者で知能の高い軽度ASD児は、「普通でいなければならない」と教室のルールに無理矢理自分を合わせ、過度のストレスを蓄積させます。学校では「静かで手のかからない良い子」として振る舞う反面、帰宅した瞬間に暴力的なパニックを起こしたり、抜毛症やチック症、夜尿症といった心身症を発症するケースが後を絶ちません。
さらに、「発達障害児に対するいじめ対策」も喫緊の課題です。ASD児独特の言葉の額面通りの受け取りや、空気の読めない発言が同級生からのからかいや排除を招くことがあります。文部科学省のいじめ防止基本方針においても、発達障害を含む配慮を要する児童生徒への早期対応が明記されていますが、普通学級の大集団ではトラブルの兆候が教員の死角になりやすいという構造的課題を認識しておく必要があります。