助産師と看護師の根本的な違いを理解するうえで、避けて通れないのが根拠法である保健師助産師看護師法の規定です。法律上、看護師は「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」(第5条)と定義されています。つまり、注射や点滴、採血といった医療行為は、原則として医師の具体的な指示がなければ行うことができません。
これに対し、助産師は「助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」(第3条)と規定されています。最大の違いは、助産師の分娩介助と業務独占にあります。医学的に異常のない正常分娩であれば、医師が立ち会うことなく、助産師自身の専門的判断のみでお産を取り上げることが法律で認められています。これは医療関連法規において極めて強い裁量権です。
さらに、決定的な格差を生み出しているのが助産所開業権と看護師の違いです。保健師助産師看護師法第42条などの規定に基づき、助産師は自らの看板を掲げて「助産院(助産所)」を開業し、地域の母子に対して入院分娩や産後ケア、母乳外来などを独立して提供することができます。看護師が単独で医療機関を開設することは法的に不可能なため、この独立開業権の有無は両職種のキャリアパスを分かつ最大の構造的相違点といえます。