動物病院の現場で非常に多いのが、「目が少し白っぽいけれど、高齢だから仕方がない」と放置されてしまうケースです。シニア期に入った犬の瞳が青白く見える場合、白内障ではなく犬の核硬化症と白内障の違いを正確に見極める必要があります。
核硬化症とは、加齢に伴い水晶体の中心部(核)の密度が高まり、光の散乱によって瞳が青白く、あるいはグレーがかって見える生理現象です。視覚への影響は極めて軽微であり、失明のリスクはありません。一方の白内障は、水晶体タンパク質の変性による病的な混濁であり、放置すれば視力を失います。
外見上の観察だけでは、熟練の飼い主であっても両者を完璧に判別することは困難です。そこで重要となるのが、犬の白内障初期症状の見分け方であり、日常の動作に潜む「犬が目が見えていないサインと行動」を注意深くチェックすることです。
臨床現場の獣医師が挙げる代表的な初期行動サインには、以下の項目があります。
- 薄暗い時間帯の散歩を嫌がる:視力低下の初期は、光量の少ない夕方や夜間に極端に歩行スピードが落ち、怖がる素振りを見せます。
- 階段や段差の前でピタッと静止する:距離感や高低差が掴めなくなるため、慣れたステップでも前足で慎重に探るようになります。
- アイコンタクトが合わない・視線が泳ぐ:名前を呼んでも飼い主の顔を直接見つめず、声のする大体の方向をぼんやり見つめます。
- 投げたオモチャやおやつを鼻で探す:視覚で追うことができず、嗅覚や聴覚を過剰に使って床を這うように探します。
- 頭部への接触にびくっと怯える:上から手が伸びてくるのが見えないため、急に触られると攻撃的な反応を見せたり身を縮めたりします。