SNSやネット掲示板で定期的に浮上するのが、「イカの姿フライはイカではなく、ほぼ小麦粉の揚げ玉である」という言説です。この真偽を確かめるべく、大手メーカーの原材料表示ラベルを精査すると、食品衛生法および食品表示基準に基づく明確な事実が浮かび上がってきます。
パッケージ裏面の原材料名欄において、もっとも重量割合が高い先頭に記載されているのは、例外なく「小麦粉」および「植物油脂」です。続いて「いか(いか粉末、するめ)」や「でん粉」「魚肉すり身」などが並びます。つまり、イカの身をそのまま衣につけて揚げた「いかの天ぷら」ではなく、「小麦粉を主原料とした生地に、粉末状のイカやするめを練り込み、イカの形状に型抜きしてフライにしたスナック」というのが、あの駄菓子・珍味の正体です。
食品工場の元開発担当者は、当時の製品設計の狙いを次のように明かしています。
「本物のイカ肉をそのまま揚げると、水分量の差で油ハネが激しく、長期間の常温保存で酸化や食感の劣化が進んでしまいます。そこで、凝縮されたするめ粉を小麦粉生地に高密度で配合し、圧延して高温で揚げることで、水分活性を極限まで下げつつ、噛めば噛むほどイカの出汁が滲み出る構造を作り上げたのです」
「イカではない」というのは半分正解で半分誤りです。イカの身そのものを丸ごと揚げたわけではありませんが、イカの旨味成分であるベタインやタウリン、アミノ酸を生地に閉じ込めた、極めて機能的な加工食品と言えます。