セ・パ最大の戦術的分岐点となっているのが、指名打者制(DH制)の歴史と投手打席ルールの違いです。
パ・リーグがDH制の導入に踏み切ったのは、1973年にアメリカ・メジャーリーグのアメリカン・リーグが同制度を採用した2年後の1975年でした。当時のパ・リーグは深刻な観客減少に苦しんでおり、「打高投低のエキサイティングな打撃戦を見せてファンを呼び戻す」ための乾坤一擲のカンフル剤として導入されたのです。
一方のセ・リーグが頑なにDH制を導入しない背景には、伝統主義だけではない野球観の相違があります。
セ・リーグが重視するのは、「投手が打席に立つことで生じるゲームの揺らぎ」です。打席に入った投手が送りバントを決めるか失敗するか、あるいは終盤の緊迫した場面で好投している先発投手に代打を出すか否かという指揮官のベンチワークは、セ・リーグ特有の醍醐味とされてきました。「9人全員で守り、9人全員で攻める」という日本古来の野球観への愛着は根強く、伝統的な駆け引きを好むファンや球団幹部が多いため、幾度となく浮上したDH導入議論は立ち消えとなってきました。
また、予告先発制度の詳細まとめを振り返ると、パ・リーグがファンサービスの一環として1994年に全面導入した際も、セ・リーグは「予告しない駆け引きこそが醍醐味」として長年抵抗しました。セ・リーグが重い腰を上げて導入に踏み切ったのは、実にパ・リーグから18年遅れた2012年のことでした。制度導入のスピード感において、実験的アプローチを恐れないパ・リーグと、保守的な伝統を重んじるセ・リーグの体質が如実に現れています。