キーを回してもスタートボタンを押してもエンジンがかからないトラブルに直面したとき、ドライバーが最初に疑うべきはバッテリーですが、現場取材では「バッテリーは新品なのに始動しない」という相談が後を絶ちません。両者の決定的な見分け方として、インパネの警告灯やヘッドライト、エアコンのファンが力強く作動しているにもかかわらずエンジンだけが回らない場合は、エンジン始動不良の理由がセルモーター側にある可能性が極めて濃厚です。
セルモーターのトラブルには、完全停止に至る前に必ずいくつかのシグナルが存在します。これらを軽視して乗り続けると、ある日突然ロードサービスを呼ぶ羽目になります。現場メカニックが挙げる代表的なセルモーター故障の前兆は以下の通りです。
最も典型的な初期症状が、キー操作時のセルモーターカチカチ音の原因となるマグネットスイッチ(電磁開閉器)の不良です。内部のリレーは作動して噛み合おうとしているものの、肝心のメイン接点の導通不良やブラシの摩耗により、モーター自体を勢いよく回転させる大電流が流れていません。また、始動時に「ギャー」「キーン」といった金属の擦れ合うような異音が響く場合は、ピニオンギアの噛み合わせ不良や戻り不良が疑われます。さらに「クランキングの回転スピードが普段より鈍い」「数回に1回は反応しない空振りが起きる」といった現象は、内部のカーボンブラシが摩耗限界に達している末期症状と言えます。