WEBコミュニティや知恵袋、SNSの相談投稿を分析すると、「年のせいでおとなしくなったと思っていたら末期腎不全だった」「冬だから寝床にこもっていると油断していた」という悲痛な手記が後を絶ちません。都内の動物病院に勤務する獣医師は、現場の実態について次のように語ります。
「猫は捕食者であると同時に、小型肉食獣として外敵に襲われる側の被捕食者でもあります。そのため、外傷や疾病による苦痛を悟られまいと極限まで隠蔽する本能が働きます。目に見えて元気を失ったときには、病勢が中等度以上に進行しているケースが珍しくありません」
見逃されやすい猫の病気初期症状として代表的なのが、10歳以上の高齢期に多発する猫の慢性腎臓病の兆候です。腎機能が低下し始めると、老廃物を排出するために尿量が増加し、激しい喉の渇きから水を大量に飲む「多飲多尿」が現れます。血液中の尿毒素が徐々に蓄積するにつれ、軽い吐き気やだるさから横になる時間が増加していきます。飼い主が「最近よく寝ているな」と見過ごしがちな行動の裏で、不可逆的な臓器不全が静かに進行しているのです。
また、猫の発熱の見分け方も重要な臨床観察項目です。猫の平熱は38.0〜39.0度と人間より高めですが、ウイルス感染や肺炎などで40度近くまで熱が上がると、体温放散を防ぐために背中を丸めてじっと動かなくなります。耳の付け根や肉球を触った際に普段と異なる異常な熱感を感じたり、小刻みな身震いを伴う場合は、感染症や内臓炎を疑う必要があります。さらに、猫がずっと寝てる呼吸が荒い状況や、胸部だけでなく腹部を大きく波打たせて呼吸している場合は、胸水貯留やうっ血性心不全など一刻を争う救急疾患の可能性を示唆しています。