社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方

社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方

社会的割引率4%の罠とは?見直しの真相と公共投資・気候変動の行方の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点で紐解きます。

割引率のわずか数パーセントの差が、数十年後の政策評価をどのように左右するのか。数式で見るとその差は驚異的です。割引率を $r$、経過年数を $t$ 年とすると、将来価値($FV$)を現在価値($PV$)に直す計算方法は以下の式で表されます。

現在価値(PV) = 将来価値(FV) ÷ (1 + r)t

仮に「50年後に100億円の防災便益(または被害防止効果)」が生じる事業を想定してみましょう。社会的割引率が4%の場合、50年後の100億円は $(1 + 0.04)^{50} \fallingdotseq 7.1$ で割られ、現在価値に換算するとわずか約14億円まで目減りします。ところが、割引率を1%に設定すると、$(1 + 0.01)^{50} \fallingdotseq 1.64$ となり、約61億円の価値として評価されるのです。実に4倍以上の開きが生じます。

項目・評価軸日本の現行水準(4.0%)欧州・気候変動モデル(1.0〜2.0%)編集部の分析・実務への波及50年後の100億円便益約14.1億円約37.2億〜60.8億円割引率が数%動くだけで、長期便益の評価額が2.6〜4.3倍も跳ね上がる。100年後の100億円便益約1.98億円(ほぼ無価値)約13.8億〜37.0億円4%では1世紀後の危機が「数字上無視」され、超長期の気候対策投資が否決されやすい。基準設定の根拠資本の機会費用(2004年指針策定当時の金利環境)社会的時間選好率(ラムゼイルール)+世代間倫理日本は財政規律を重視し固定化。欧米は「将来世代の効用」を重視し可変設定。国土交通省の最新対応基本値として4%を存続感度分析として複数割引率(例:2%等)を併記一律改定による「過去事業との比較不能」を回避しつつ、実情に配慮した玉虫色の折衷案。

この差が直撃するのが、橋梁やトンネルの維持管理LCC(ライフサイクルコスト)です。施設を長寿命化するために「今、多額の予算を投じて予防保全工事を行う」か、「傷んでから対症療法で修繕するか」を比較検討する際、割引率が4%だと「30年後にかかる巨額の更新費用」が現在価値では小さく見えてしまいます。結果として「今コストをかけて予防するより、未来に先送りした方が経済的に合理的」という致命的な本末転倒が起きる構造を生んでいたのです。

佐藤 大輔
著者

佐藤 大輔

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