自然侵食説を支持する研究者たちが提示する最も説得力のある論拠は、海上の陸地における地層との完全な一致です。与那国島の東南岸にある景勝地「サンニヌ台」に足を運ぶと、そこには海底遺跡と見紛うばかりの巨大な階段状の岩場や、平坦なテラス状の岩肌が露出しています。サンニヌ台は波浪の打撃と風化によって自然に形成されたことが明らかな地形であり、与那国島海底地形の特異性は、陸上部から海底へと連続する地殻構造の一部に過ぎないという見方が地質学的には極めて自然です。
人工説派が主張する「クサビ跡」や「石器で削った溝」についても、地質学的な反証が重ねられています。海底の岩盤に生じる小孔は、波に運ばれた小石が岩の割れ目に挟まり、潮流の渦によって回転しながら岩を穿つ「ポットホール(甌穴)」や、穿孔貝などの海洋生物による浸食痕である可能性が極めて高いと結論づけられています。また、人工構造物であれば不可欠であるはずの「生活痕跡(土器片、人骨、炉の跡、定住に伴うゴミ捨て場)」が、数十年に及ぶ調査にもかかわらず水深域から1点も出土していないという事実は、考古学的な観点から致命的な弱点となっています。
さらに、岩塊の構造自体も人工の積み石ではなく、下層の基盤岩と完全に一体化した「一枚岩(モノリス)」です。数万トンにおよぶ巨石を人工的に切り出し、海中で階段状に削り出したとするには、当時の推定技術水準から見てあまりに不整合が多すぎるという指摘は避けられません。