九品仏川緑道の真価を体験するには、自由が丘駅の喧騒から出発し、静寂に包まれた九品仏浄真寺へと歩みを進める西向きの散策ルートが最適です。徒歩で片道約20分から25分(寄り道を含めると1時間〜1時間半)の距離の中に、都市のグラデーションが凝縮されています。
出発点は自由が丘駅南口改札を出てすぐのマリ・クレール通りに面した緑道です。このエリアはアパレルブティックやテラスカフェが並び、常に華やかな空気が漂っています。石畳に埋め込まれたベンチに腰掛けて行き交う人々を眺めるだけでも、パリのサンジェルマン大通りを彷彿とさせる洗練された風情を感じられるでしょう。
東急大井町線の線路を越えて西(等々力方面)へ歩道を進むと、街の表情は徐々に住宅街の落ち着きを帯びてきます。この中腹区間こそが、地元住民に愛される緑陰の散歩道です。桜の巨木がアーチを描き、夏には濃い木陰を、秋には紅葉の絨毯を提供してくれます。
緑道の西端付近、世田谷区等々力方面へと差し掛かると、突如として鬱蒼とした森が現れます。これが浄土宗の名刹、「九品仏浄真寺(くほんぶつじょうしんじ)」です。東急大井町線九品仏駅の目の前に広がる境内は、約12万平方メートル(約3万6千坪)におよぶ広大な敷地を誇ります。本堂の対面には三基の阿弥陀堂が並び、それぞれに3体ずつ、計9体の阿弥陀如来坐像が安置されていることから「九品仏」の名が付きました。
境内へ足を踏み入れると、自由が丘の商業エリアとは対照的な凛とした静寂に包まれます。春の桜、青もみじ、晩秋の銀杏と紅葉が見事であり、都内屈指のパワースポットとしても知られています。自由が丘駅南口のモダンなカフェ空間から、九品仏浄真寺の静寂のサンクチュアリへ。この動と静の鮮やかなコントラストこそが、九品仏川緑道散策ルート最大の醍醐味です。