「どの船に乗っても目的地が同じなら結果は一緒ではないか」と考える旅行者は少なくありません。しかし、現場の海運関係者が口を揃えるように、軍艦島ツアーほど船の選定が体験価値を左右するアクティビティは稀です。その最大の理由は、外海に面した特殊な航路環境と、軍艦島特有の接岸設備にあります。
軍艦島が位置する野母半島沖は、東シナ海の荒波が直接押し寄せる海域です。長崎港内を出ると波の性質が一変し、うねりを伴う外洋の洗礼を受けます。ここで問題になるのが軍艦島クルーズ船酔い揺れ比較における船体構造の違いです。一般的な単胴船(モノハル)は波の衝撃を受けやすく、横揺れ(ローリング)が大きくなる傾向があります。一方、2つの船体を連結した双胴船(カタマラン)は横揺れに対して強い復原力を持ち、停船時や低速航行時でも揺れが抑制される特性を持っています。
さらに見過ごせないのが、軍艦島への接岸可否を決定づける軍艦島上陸基準波の高さの壁です。長崎市の条例(長崎市端島見学施設条例等)に基づき、以下の条件が1つでも該当する場合は上陸が禁止されます。
【長崎市が定める主な上陸中止基準】
・伊王島沖の波高計で波の高さが0.5メートルを超える場合
・風速が毎秒5メートルを超える場合
・視程(見通せる距離)が500メートル以下の場合
・ドルフィン桟橋で船長が安全に離着岸できないと判断した場合
基準値である「波高0.5メートル」は、陸上から見れば穏やかに見える海面でも容易に達してしまう数値です。特に軍艦島の「ドルフィン桟橋」は、消波ブロックのない吹きさらしの岩礁に鉄骨を打ち込んだ特殊構造であり、外海のうねりが直接ぶつかります。そのため、操船技術はもちろんのこと、桟橋にピタリとつけられる船体制御装置(バウスラスターなど)の有無や、船の総トン数が接岸の成否に直結するのです。