警察官や検察官が告訴状を精査する際、最初に見るのは感情的な被害の悲惨さではなく「刑法の構成要件に該当する事実が客観的かつ論理的に記述されているか」という一点です。どれほど長文で怒りを綴っても、法的要件を欠いていれば書類として通用しません。
標準的な告訴状の書式における必須記載項目は以下の通りです。
- 表題:「告訴状」と中央に明記。
- 提出先および提出日:提出先の警察署長または検察官の宛名(例:「〇〇警察署長 殿」)、提出年月日。
- 当事者の表示:告訴人および被告訴人(相手方)の氏名、生年月日、職業、住所、連絡先。
- 告訴の趣旨:「被告訴人の下記所為は刑法第〇条の〇〇罪に該当するものと思料されますので、被告訴人を厳重に処罰することを求め、ここに告訴いたします」といった厳重処罰の文言。
- 告訴事実:犯行の日時、場所、犯行の具体的な態様、結果(被害状況)を、客観的証拠に紐付けて5W1Hで明確に記載。
- 立証方法(添付証拠目録):事実を裏付ける証拠の一覧。
特に実務で厳格な注意を要するのが親告罪の告訴期間です。名誉毀損罪や侮辱罪、器物損壊罪などの親告罪は、刑事訴訟法第235条により「犯人を知った日から6ヶ月」を経過すると告訴権が消滅します。この期限を1日でも過ぎれば、警察は法的に受理することができません。ネットの誹謗中傷などで発信者情報開示請求を行っている間に半年が迫るケースが極めて多いため、期間計算には最大の警戒が必要です。
また、告訴状の提出先は刑事訴訟法上、「犯罪地」「犯人の住所地・居所地」「告訴人の住所地」を管轄する警察署または地方検察庁となります。被害者の自宅近くの警察署へ持ち込む場合、管轄違いを理由に敬遠される事例が散見されるため、犯罪地(被害が発生した場所)を管轄する警察署へ持ち込むか、事前に管轄協議を済ませておくことが受理への近道です。