ロリータファッションのルーツを辿ると、1980年代初頭の原宿ストリートに行き着きます。当時、DCブランドブームのなかで誕生した「MILK」や「Jane Marple」といったブランドが、少女服のノスタルジーを大人向けに再解釈したのが始まりとされています。
1990年代に入ると、ヴィジュアル系バンドの熱狂的なファン(バンギャル)たちが、バンドの世界観に呼応するように黒やフリルの衣装を身に纏い始めました。伝説のバンド「MALICE MIZER」のリーダー・Mana氏が提唱した「エレガント・ゴシック・ロリータ(EGL)」の概念は、黒を愛好する層に決定的な美意識を植え付けます。
このムーブメントを一気に社会現象へと押し上げたのが、1998年に創刊されたストリートスナップ誌『KERA!』でした。神宮橋や原宿の歩行者天国に集まる個性豊かな愛好家たちを毎月克明に記録し、地方の少女たちにとってのバイブルとなったのです。2004年には深田恭子氏主演の映画『下妻物語』が大ヒットを記録。それまでサブカルチャーのアンダーグラウンドにいたロリータは、日本固有の誇るべき服飾文化として広く認知されるに至りました。
服飾社会学の視点から特筆すべきは、このカルチャーが「男性の視線(男受け)からの徹底的な脱却」によって成立した点です。当時の日本社会における女性向けファッションが「モテ」や「男性に好まれる清潔感」を軸に構成されていたのに対し、ロリータたちは自らの欲望――「誰のためでもなく、自分のためにお姫様になる」という意志――のために、何層ものレースで自らを武装しました。ある意味で、過剰なガーリッシュさは社会に対する強烈なプロテスト(抗議)でもあったのです。