ネット上のQ&Aサイトなどでは、「有給をすべて使い切ってから傷病手当金を申請するのがベスト」というアドバイスが散見されますが、これは必ずしも全員に当てはまる正解ではありません。むしろ、有給をゼロにしてしまうことで復職時に身動きが取れなくなるケースが多発しています。
休職期間が数ヶ月以上に及ぶと予想される場合、有給休暇はすべて使い切るのではなく、意図的に5日〜10日程度を残して早期に傷病手当金へ切り替えるのが実践的な防衛策です。
理由は、復職直後のリスクヘッジにあります。長期間休職した社員が職場復帰した場合、体調が完全に安定するまでには時間がかかります。復帰直後に通院が必要になったり、ぶり返した体調不良で突発的に休まざるを得なくなったりすることは日常茶飯事です。この際、有給休暇が1日も残っていなければ、即座に「欠勤控除」となって給料が削られ、精神的にも金銭的にも追い詰められてしまいます。
さらに労働基準法第39条では、有給休暇の次回付与要件として「全労働日の8割以上の出勤」が義務付けられています。長期間の休職に入ると、翌年度の有休が付与されない(付与日数がゼロになる)可能性が極めて高くなります。つまり、復職後の1年間は「手持ちの有給がゼロの状態で乗り切らなければならない」という過酷な状況に直面するわけです。復職後のセーフティネットとして有給を残しておく判断は、メンタルヘルスを保つ上でも極めて重要となります。