外来通院による投薬治療を続けていた患者が、なぜ最終的に入院という選択肢に至るのか。取材した複数の当事者の声から浮かび上がったのは、自力ではもはやコントロール不能となったうつ病入院に至る経緯と初期症状の過酷な進行でした。
多くの体験者が口を揃えるのは、睡眠薬がまったく効かなくなる重度の不眠、食事の味が一切しなくなる味覚喪失、そして「消えてしまいたい」という希死念慮の急激な高まりです。都内のIT企業で勤務していた30代男性Aさんは、当時の壮絶な心理状態を次のように述懐します。
「自宅にいても仕事のチャット通知に怯え、ベランダの手すりを見るたびに吸い寄せられそうになっていました。見かねた家族が主治医に泣きつき、緊急入院が決まりました。限界を超えているときは、自分の意思で休むことすらできません」
精神医療において、入院形態には法的な区分が存在します。特に知っておくべきは、本人の同意に基づく「任意入院」と、本人の判断能力が著しく低下し自傷他害のおそれがある場合に精神保健指定医の診断と家族等の同意で決定される「医療保護入院」の決定的な違いです。体験談の多くでは、病初期に医療保護入院として緊急保護され、状態の安定とともに任意入院へと切り替わっていくプロセスが報告されています。自力での生活維持が破綻した瞬間こそが、外来治療から入院治療へ舵を切る決定的な境界線となります。