厨房の指揮を執るシェフのこだわりは徹底している。毎週現地から空輸される新鮮なブラッドオレンジ、大粒のカッパーリ(ケッパー)、職人が手作りするホエーチーズ。それに合わせるのは、日本の沿岸から届く旬の鮮魚だ。
「シチリア料理の根底にあるのは、素材への絶対的な信頼と潔さです」とシェフは語る。余計な装飾を削ぎ落とし、塩とオイル、そしてレモンの酸味だけで魚の旨味を最大限に引き出す手法は、どこか和食の美学にも通じるものがある。
旬のイワシとフェンネル(ウイキョウ)、松の実、レーズンを絡めた手打ちパスタ「カザレッチェ」を一口口に含めば、爽やかなハーブの香りと青魚の濃密なコクが口いっぱいに広がる。それはまさに、地中海の波しぶきをそのまま味わうかのような衝撃だ。