松田優作さんの最初の妻である松田美智子さんは、劇団「文学座」の研究生時代に出会った女性です。当時、まだ何者でもなく経済的にも困窮していた優作さんを公私にわたって献身的に支え、1975年に婚姻関係を結びました。
優作さんが『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役で一躍国民的スターへと駆け上がっていく過酷な日々を、最も間近で支えたのが美智子さんでした。しかし、急激なスターダムへの上昇に伴う多忙や、優作さんが抱えていた表現者としての狂気と葛藤、そして後述する新たな出会いによって、2人の関係には徐々に亀裂が生じることとなります。
結果として1981年に正式な離婚が成立。美智子さんは優作さんと別れた後、本格的にノンフィクション作家・小説家としての道を歩み始めました。
美智子さんが上梓したノンフィクション『越境者 松田優作』は、優作さんの出自の秘密や壮絶な生い立ち、知られざる素顔を極めて客観的かつ情熱的な筆致で描き切り、ファンや映画関係者の間で決定的な名著として絶賛されました。愛憎を越え、表現者として互いを認め合っていたからこそ書けた一冊として、今なお読み継がれています。