ハシビロコウといえば「何時間も彫刻のように動かない鳥」としてテレビやネットで有名ですが、彼らが動かないのには生き残り戦略に基づいた合理的で明確な理由が存在します。
原産地であるアフリカ東部〜中央部(ウガンダやザンビアなど)の広大なパピルス湿地において、ハシビロコウの主食は「プロトプテルス」と呼ばれる大型のハイギョ(肺魚)です。ハイギョは肺呼吸を行う魚類であるため、数十分に一度、呼吸をするために必ず水面に顔を出します。
泥水の中で動かずに待ち構え、魚が呼吸のために浮かび上がった決定的な一瞬を逃さず、重厚な嘴を打ち下ろして捕獲する——これがハシビロコウの基本戦術です。わずかな物音や水面の揺れで獲物に逃げられないよう、極限まで気配を消す「究極の待ち伏せハンター」として進化した結果が、あの微動だにしない生態の真相なのです。
そのため、危険を感じていないときや獲物を狙う必要がない園内では、実は羽づくろいをしたり、首をかしげたり、来園者に対して愛想を振りまくように嘴をカタカタと鳴らす挨拶行動「クラッタリング」を見せてくれたりと、意外なほど豊かな表情を見せてくれます。