バイオレンスやクライム系とは全く異なるアプローチで城砦の魅力を提示し、多くの読者を魅了しているのがマンガ作品『九龍ジェネリックロマンス』だ。『恋は雨上がりのように』で知られる漫画家・眉月じゅんが手掛ける本作は、ノスタルジックな九龍城砦の街並みを舞台に繰り広げられるミステリアスなラブストーリーである。
蒸し暑い空気感、喫茶店で立ち上る湯気、どこか懐かしくも切ない登場人物たちの感情の揺れ動き――。単なる背景描写を超えて、生活の温度感や匂いまでもが緻密なタッチで描かれている。殺伐とした危険な魔窟という一面だけでなく、人が生き、恋をした生活空間としての九龍城砦が持つロマンティシズムを見事に抽出し、幅広い層から圧倒的な支持を集めている。