長年平行線をたどっていた北方領土交渉に大きな転機が訪れたのは、2018年のシンガポールでの首脳会談だった。1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約締結交渉を加速させるという「電撃合意」は、両国に激震を与えた。四島の一括返還から、歯舞・色丹の二島引き渡しを優先する戦略的転換は、日本国内でも賛否を巻き起こすこととなった。
現実的な妥結策を模索したこの決断は、長年の停滞を破る一手に見えた。しかし、ロシア国内の領土割譲禁止を盛り込んだ憲法改正や、その後の情勢の変化により、暗雲が立ち込め始める。妥協点を見出そうとしたギリギリの攻防は、政治的リアリズムの難しさを改めて浮き彫りにした。