主役の北條すず役を射止めたのは、オーディションを勝ち抜いた松本穂香だった。不器用ながらも前を向いて生きるヒロインの愛らしさと内に秘めた強さを、透き通るような存在感で体現している。夫の周作を演じた松坂桃李との掛け合いは、初々しさと深い夫婦愛が漂い、視聴者を物語の世界へと瞬時に引き込んだ。
ロケーション撮影においては、昭和初期の呉や広島の情景を再現するため、徹底したこだわりが追求された。撮影現場での未公開エピソードとして、松本穂香が当時の生活所作を身につけるため、割烹着姿で毎日包丁の握り方や着物の立ち振る舞いを猛特訓していたという裏話が明かされている。
また、松坂桃李も当時の青年が背負っていた重圧と優しさを同居させるため、監督やスタッフと細かく意見を交わしながら役を深めていった。演者たちの誠実なアプローチが、画面のすみずみにまで作品の温もりを宿らせている。