2016年10月期にTBS系列の「火曜ドラマ」枠で放送された『逃げるは恥だが役に立つ』は、初回視聴率10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)からスタートし、一度も数字を落とすことなく右肩上がりに推移、最終回には20.8%の大台を突破するという異例の快進撃を見せました。
その中心にいたのが、35年間女性経験がなく「プロの独身」を自認するシステムエンジニア・津崎平匡を演じた星野源です。海野つなみによる原作漫画『逃げるは恥だが役に立つ』に描かれた平匡は、自尊感情が低く、他者との間に強固な壁を築く人物でした。星野源はこの複雑な内面を、無駄を削ぎ落とした微細な視線の動きや指先の強張り、抑揚を抑えた声のトーンによって見事に具現化しました。
当時のドラマ制作陣や演出家が明かした証言によると、星野源は台本の読み込みにおいて「平匡が決して単なる変わり者や滑稽な男に見えないこと」を最重要視していたとされます。真面目で不器用、それゆえに傷つくことを恐れる平匡の心理をリアリティ豊かに演じ切ったことで、星野源の演技力に対する評判は業界内外で決定的なものとなりました。