名曲『行かないで』の原曲発売年は1989年11月20日。玉置浩二にとって通算5枚目のソロシングルとして世に送り出されました。この楽曲は、フジテレビ開局30周年記念特別番組として2夜連続で放映された超大作ドラマ『さよなら李香蘭』(主演:沢口靖子)の主題歌として制作された背景を持ちます。
満州国で日本人でありながら中国人スター「李香蘭」として生きることを運命づけられ、終戦とともに祖国叛逆者として銃殺刑の危機に瀕した山口淑子氏の激動の半生を描いた同作。制作陣から主題歌のオファーを受けた玉置浩二は、歴史の荒波に引き裂かれた人々の哀哀たる祈りを、わずか数小節のピアノの導入部と繊細なメロディラインへと凝縮させました。
当時の制作関係者の証言によると、玉置はドラマのシナリオが持つ重厚な悲劇性に深く共鳴し、スタジオのピアノに向かいながら一気に主旋律を紡ぎ出したと伝えられています。単なるタイアップの枠を超え、過酷な運命に翻弄された一人の女性の孤独と、平和への根源的な希求がメロディの根底に宿っています。