佐藤賢一の作家人生における金字塔にして、日本文学史上でも類を見ないスケールを誇るのが集英社から刊行された全18巻に及ぶ巨編『小説フランス革命』です。1789年の三部会招集からバスティーユ襲撃、ロベスピエールの恐怖政治、そしてテルミドールのクーデターに至る巨大なうねりを真っ向から描き切りました。
本作の比類なき特徴は、群像劇としての徹底したリアリズムです。ミラボー、ダントン、ロベスピエール、サン=ジュスト、デムーランといった革命の主役たちを、理想に燃える英雄としてのみ描くのではなく、怯え、嫉妬し、権力闘争に疲れ果てる「生身の政治家」として生々しく肉付けしていきました。
教科書的な年表の奥に隠された議会の駆け引きや大衆の熱狂を、現代のポピュリズムや権力構造にも通じる普遍的なドラマへと昇華させた手腕は、歴史小説の枠組みを大きく押し広げた記念碑的偉業と評されています。