指導者として名高い伊勢ケ浜親方ですが、その土俵人生もまた栄光に満ちたものでした。青森県西津軽郡木造町(現・つがる市)出身の親方は、近畿大学相撲部を経て大島部屋に入門。すらりとした均整の取れた体躯と端正な顔立ちから「津軽ナマコ」「津軽のプリンス」などの愛称で親しまれました。
現役時代の四股名は旭富士正也(あさひふじ せいや)。右四つからの鋭い下手投げや名人芸と称された技のキレを武器に、昭和の大横綱・千代の富士や北勝海としのぎを削りました。大関昇進後も安定した成績を残し、平成2年(1990年)名古屋場所後に見事第63代横綱へと昇進。幕内最高優勝4回、殊勲賞2回、技能賞5回という輝かしい実績を残し、平成4年に現役を引退しました。
引退後は年寄・旭富士から安治川を襲名して部屋を創設。2007年には名門の名跡である「伊勢ケ浜」を継承し、部屋の名称も伊勢ケ浜部屋へと変更しました。現役時代に培った緻密な相撲理論と勝負勘は、そのまま弟子たちへの指導ノウハウへと昇華されていくことになります。