物語の最初の一歩を飾るカントー御三家ポケモン(フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメ)の完成度の高さは、ゲームデザインの歴史においても傑出した事例として語り継がれています。
フシギダネは序盤のニビジム(いわタイプ)、ハナダジム(みずタイプ)に対して有利に立ち回れる「初心者向け」の設計。対してヒトカゲは序盤で苦戦を強いられるものの、最終進化系のリザードンが放つ圧倒的な怪獣的ヒロイズムでプレイヤーを魅了する「挑戦者向け」のバランスとなっています。ゼニガメはその中間に位置し、安定した耐久力で中盤以降を支える役割を担いました。この3匹の選択が、プレイヤーそれぞれの旅の難易度とドラマを生み出す見事な導入部となっていました。
一方、終盤に待ち受けるカントー地方 伝説のポケモンたちには、世界観の深淵を物語る重厚な物語が与えられています。無人発電所に潜むサンダー、ふたご島に眠るフリーザー、チャンピオンロードに君臨するファイヤーという三鳥の配置は、ダンジョン攻略の達成感と神話的な威厳を両立させていました。
そして、最もプレイヤーの心を揺さぶったのがミュウツー 誕生の経緯と真相です。グレンタウンの荒れ果てた「ポケモンやしき」に残された日記には、南米のジャングルで新種「ミュウ」が発見され、その遺伝子を人工的に組み換えて「ミュウツー」が産み落とされた生々しい経緯が断片的に記されています。「ミュウがつかのまに こどもをうんだ うまれたばかりの ジュニアを ミュウツーとなづけた」「ミュウツーは つよすぎる だめだ… わたしの てには おえない!」という短いテキストは、生命倫理への抵触や暴走した科学の狂気を描き出し、子供向けRPGの域を遥かに超えた戦慄を当時のプレイヤーに刻み込みました。