猫が胸だけでなくお腹の筋肉を総動員して呼吸しなければならない背景には、胸腔内や肺、心臓における重篤な病変が隠されています。代表的な4大要因を把握しておくことが重要です。
1. 心筋症(特に肥大型心筋症)と肺水腫
猫の心疾患の代表格である肥大型心筋症は、心臓の筋肉が内側に向かって分厚くなり、血液を正常に送り出せなくなる病気です。血液の鬱滞(うっ滞)により血管から水分が漏れ出し、肺組織に水が溜まる肺水腫の呼吸困難を引き起こします。肺が水浸しになることでガス交換ができなくなり、溺れているのと同等の苦痛から、激しい腹式呼吸や開口呼吸に陥ります。
2. 胸水貯留(心不全・猫伝染性腹膜炎・腫瘍など)
肺の外側である胸腔内に液体が溜まる病態です。胸水が物理的に肺を外側から圧迫するため、肺が大きく膨らむことができなくなります。その結果、猫は少しでも空気を吸い込もうとして、お腹を大きくペコペコと動かす浅く速い呼吸を示します。原因としては、うっ血性心不全、猫伝染性腹膜炎(FIP)、リンパ腫などの悪性腫瘍、乳び胸などが挙げられます。
3. 猫喘息・慢性気管支炎
気道がアレルギー反応などによって慢性的な炎症を起こし、気管支が狭窄する疾患です。特徴的なのは猫喘息の発作時の姿勢で、首を低く伸ばして「ゼーゼー」「ケホッケホッ」と咳き込みながら激しくお腹をへこませます。吐き戻しのポーズと酷似しているため見落とされがちですが、放置すると窒息のリスクを伴います。
4. 外傷性気胸・横隔膜ヘルニア・重度の貧血
高所からの落下事故や強い衝撃によって横隔膜が破れ、腹腔内の臓器が胸腔内に入り込む横隔膜ヘルニアや、肺に穴が空いて空気が漏れる気胸でも重篤な腹式呼吸が発生します。また、重度の貧血や熱中症、強い痛み・ストレスでも酸素需要が増大し、呼吸が荒くなります。