『べっぴんさん』の物語構造は、神戸の名家である「坂東家」、事業パートナーとなる「野上家」、そして主人公・坂東すみれが立ち上げる子ども服店「キアリス」の創業仲間という3つの同心円によって構成されています。
中心人物となる坂東すみれ(芳根京子)は、繊維会社「坂東営業部」を一代で築いた父・五十八(生瀬勝久)と、病弱ながら深い愛情を注ぎ早くに他界した母・はな(菅野美穂 / 語り兼任)の次女として生まれました。奔放でリーダーシップに長けた姉のゆり(蓮佛美沙子)とは対照的に、物静かで手先が器用、内省的な性格として描かれます。
すみれの夫となる坂東紀夫(永山絢斗)は、坂東営業部の番頭を務める野上正蔵(名高達男)の息子・野上潔(高良健吾)の幼馴染であり、誠実で几帳面な性格から婿養子として坂東家に入ります。一方で潔は姉のゆりと結ばれ、坂東家の姉妹がそれぞれ手を取り合いながら、戦前・戦中・戦後の激動期を生き抜いていく構造が設計されました。
そして物語の真のエンジンとなるのが、すみれを中心に結成された「キアリス」の創業メンバー4人です。
- 坂東すみれ(芳根京子):デザイン・縫製担当。控えめながら芯が強く、製品のクオリティに一切妥協しない推進役。
- 小野明美(谷村美月):元坂東家の女中・マツの娘。看護師の知見を活かし、育児の衛生知識や実用的な製品設計を支える現場の要。
- 多田良子(百田夏菜子):すみれの女学校時代の同級生。型紙製作やムードメーカーを担当し、明るさの裏に主婦としての葛藤を抱える。
- 田坂君枝(土村芳):同じく同級生。病弱ながら抜群のイラストセンスと色彩感覚を持ち、キアリスの象徴となるロゴやデザインを手掛ける。
社名である「キアリス(Kiaris)」は、彼女たち4人の名前の頭文字(君枝のキ、明美のア、良子のリ、すみれのス)を組み合わせたもの。単なるビジネスパートナーにとどまらず、家父長制の残る時代に家庭と仕事を両立させようともがく「運命共同体」として描かれた点に、本作の相関関係の際立った特徴があります。