「二軒茶屋」という名の発祥を紐解くと、交通の要衝において文字通り「2軒の茶屋が隣り合って営業していたこと」に端を発しています。街道を行き交う旅人や寺社への参拝客にとって、峠越えの前や舟着き場の直後は喉を潤し足を休める絶好の休息地でした。そこに2軒の茶屋が並び立ち、互いに名物競い合ってもてなした光景がそのまま地域一帯の通称となり、やがて固有名詞や地名へと定着した歴史的経緯があります。
その代表格が、京都・祇園の八坂神社南楼門前にあった2軒の門前茶屋です。室町時代末期、鳥居の左右に「中村屋」と「柏屋(のちの藤屋)」が向かい合って店を構え、名物の「祇園豆腐(田楽豆腐)」を供して評判を取りました。この2軒が「二軒茶屋」と総称され、江戸期の絵図や狂言、紀行文にもその賑わいが記録されています。のちに中村屋が料亭「中村楼」として暖簾を守り継ぎ、480年を超える格式高い京料理の殿堂となりました。
もう一つの代表例が、三重県伊勢市の勢田川河畔です。江戸時代、伊勢神宮への舟参宮で賑わった神社港(かみやしろみなと)から川を遡った舟着き場に、「角屋」と「湊屋」の2軒の茶屋が並んでいました。天正3年(1575年)創業の角屋は、参拝客に「二軒茶屋餅」を振る舞って旅の疲れを癒やし、現在も「二軒茶屋餅 角屋本店」として伝統の味を紡いでいます。