数字上の利益率や手軽さだけを見れば「夢のビジネス」のように映るクレープ店ですが、現場の現実はそれほど甘くありません。インターネット上の掲示板やSNSでは、「脱サラしてクレープのキッチンカーを始めたが、半年で撤退した」「土日しか売れず生活が成り立たない」といった生々しい告白が後を絶ちません。クレープ屋さん失敗の真相を追究すると、机上の計算では見落とされがちな3つの構造的障壁が存在します。
第1の壁は、「出店場所の争奪戦と場所代の重圧」です。キッチンカーは車があればどこでも営業できるわけではありません。道路交通法や保健所の営業許可、土地所有者の許可が厳格に求められます。売上が見込めるショッピングモールの店頭、大型公園、オフィス街、フェス会場などの「一等地」は、すでに大手仲介業者や実績のあるベテラン事業者が押さえており、新規参入者が平日から利益の出る場所を確保するのは至難の業です。好立地を確保できたとしても、売上の15〜20%を出店手数料として徴収され、手元に残る利益が大幅に削られるケースが頻発しています。
第2の壁は、「天候依存と物理的な提供スピードの限界」です。クレープは基本的に作り置きができません。1枚を焼き上げてトッピングし、包んで手渡すまでにどんなに熟練しても1分30秒〜2分を要します。1人でオペレーションを行う場合、1時間に提供できるのはせいぜい25〜30食。客単価700円とした場合、満員御礼でフル稼働しても時給換算の売上上限は約1万8,000円〜2万1,000円に頭打ちとなります。そこへ雨天や強風が重なれば、客足は一瞬で途絶え、仕込んだ生地の廃棄と燃料代だけが赤字として積み上がります。
かつて商業施設を中心に人気を博した老舗チェーン「クレープおじさん」の事例を見ても、時代の変遷と環境の変化は容赦ありません。同ブランドは2018年にジョイポリス梅田店やLOFT名古屋店といった有名拠点を惜しまれつつ閉店しました。現在も京都の新京極店などでは根強いファンに愛され続けていますが、商業施設の集客構造や賃料設定、競合ひしめく中でのテナント維持がいかに過酷であるかを物語る象徴的なファクトといえます。